新エネルギー、独立電力事業者などによる分散電源、電力自由化および電力需要の増加による電力システムの過負荷運転などを考慮すると、今後の電力システムの安全性・信頼性向上がさらに要求され、発電機制御による安定化はますます重要な役割を果たすものと考えられる。本研究の動機となるAVRでは、故障により発生した動揺を速やかに収束させるために高いゲインとしているが、発電機の絶縁強度の制約でリミッタを設けており、励磁電圧を積極的にリミッタに当てて動揺を押さえ込んでいる。したがってAVR入力ゲインの設計が極めて困難であり、現状では経験に基づいてゲインが設定されている。平衡点制御を基本とする本研究で得られた成果は以下の通り要約できる。 (1)過負荷運転で運転点が非線形領域にある場合は、平衡点解析に基づく非線形制御がPSSに比較して有効である。 (2)AVR-GOVリミッタ到達前後など電力システムがハイブリッドシステムとみなせる状態では、前後の平衡点を解析することにより入力ゲインを決定することができる。 (3)既に取り扱った多くのモデルシステムに引き続き、電気学会技術報告書(第754号)の標準1機モデルに平衡点解析を適用し、動揺方程式として得られる12元連立非線形微分方程式を非線形のままで線形化しないでAVRのリミッタも考慮した場合、標準モデルの臨界故障除去時間および電力輸送限界などを向上させることが検証できた。 (4)本研究で得られた成果の一般性を確認するために、非線形システムである倒立振子システムに適用した結果、提案法は有効な手法であることが分かった。
|