高圧架空配電線の近傍に落雷が生じた場合、電線の心線には誘導雷サージが侵入する。このとき、電線支持点では、がいしの絶縁破壊に続きバインド線先端から電線表面に沿って沿面放電が進展する。この沿面放電は、電線溶断などの災害の原因となる。このような災害を未然に防ぐためには、沿面放電現象の特性解明が重要となるが、現在では未解明な点が多く存在している。 本研究では、誘導雷サージの波頭長、波高値が電線表面の正、負極性沿面放電にどのような影響を及ぼすかを観測し、以下のような新しい知見を得た。 1、正極性沿面放電(1)進展長について 進展長は波頭長変化の影響を受けず、波高値の上昇とともに単調に増加する。(2)進展様相について 進展様相は、波頭長、波高値変化の影響を受けず、電線表面をジャンプしながら進展する。 2、負極性沿面放電(1)進展長について 波頭長が標準波程度であれば、進展長は、波高値の上昇とともに1次増加、減少、2次増加という過程を経る。各領域は、波高値が、30〜50kV、50〜90kV、90kV以上の範囲となる。波頭長が増加すれば、進展長の減少領域は減少する。波頭長が8μs程度になれば、進展長は、波高値の上昇とともに単調に増加するようになる。(2)進展様相について 波頭長が標準波程度であれば、1次増加領域では、電線表面に密着した様相となる。減少領域では、密着様相の先端に円弧状にジャンプする様相が現れる。さらに、波高値の上昇とともに円弧状ジャンプの先端に離散的にジャンプする様相が現れる。2次増加領域では、密着、円弧状ジャンプ、離散的ジャンプが常に現れる。波頭長が増加すれば、放電先端のジャンプ現象は抑制され、放電先端でも密着様相が現れる。負極性沿面放電では、波頭長、波高値の変化が、進展様相に影響を与え、それが進展長に影響を及ぼしていることが判明した。
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