研究概要 |
集積回路におけるCu配線は,フィールド酸化膜であるSiO_2に拡散・反応を防止するバリヤ層を設けて,配線を埋め込むダマシン法による形成がなされている。配線の微細化に伴い,配線層の等価的断面積を有効に確保するには,バリヤ層のより一層の極薄化と低抵抗材料による実現が望まれる。本年は低抵抗材料として,Ta-W合金薄膜およびVN薄膜の適用について実験的検討を行った。Ta-W合金は全域固溶系であり,その薄膜の抵抗率は最大でも〜35μΩcmと低抵抗である。薄層化した場合においても,20nm程度の厚さでも,バリヤ材料としての抵抗率の目安である100μΩcm以下の抵抗率を十分実現できることが知られた。このバリヤを適用した,Cu/Ta_<0.5>W_<0.5>(20nm)/SiO_2/Si系では,アモルファスSiO_2上にも関わらず,Ta_<0.5>W_<0.5>(110)配向が得られ,その上の配線層をCu(111)配向とすることができた。熱処理に伴う界面での拡散・反応を調べたところ,Ta_<0.5>W_<0.5>/SiO_2界面では,付着力に寄与する酸化還元反応が見られたが,系は750℃1hの熱処理を行っても安定であり,良好なバリヤ特性を示した。一方,VN薄膜は,NaCl構造の抵抗率〜50μΩcmの多結晶膜が得られた。この膜をバリヤとして用いたCu/VN/SiO_2/Si系では,配線層のCuはランダム配向となったが,バリヤの膜厚を10nmと極薄とした系においても,700℃1hの熱処理にも十分耐える信頼性を持った系となることが確認できた。このように,低抵抗材料を用いることによっても,極薄バリヤとして十分有用なものが得られるということを確認できた。次年度以降,これらバリヤのキャラクタリゼーションを精査して,バリヤ機能の発現の要因を実験的に明らかとして行く予定である。
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