研究概要 |
昨年度に引き続き,フィールド酸化膜であるSiO_2上のCu配線のモデル系となるCu/VN/SiO_2/Si系を対象とし,特にデザインルール0.1μm世代の極薄バリヤを目的としてバリヤ厚さを10nmとした実験系について,その信頼性の要因となるバリヤ組織とその熱処理に伴う構造的な変化に着目して実験的検討を行った。高分解能電子顕微鏡を用いて,系の断面観察を系統的に行った。堆積直後のVNバリヤは粒径数nm〜10nm程度のナノクリスタルからなる均一な連続膜を呈していた。この系に600℃1時間の熱処理を行うと,僅かな粒成長が認められたが,本質的な構造の変化は見られず,系の化学的および組織学的観点から十分安定なバリヤであることが確認された。さらには,熱処理前後の系を二次イオン質量分析により,極微量のCu拡散を検証したが,600℃の熱処理においても十分なバリヤ機能を有していることが明らかとなり,有用な極薄バリヤ材料としての基本的な特性が確認できた。VN極薄バリヤの劣化機構を検討するために,800℃熱処理後の系の断面観察を試みており,VN結晶粒の成長様式によりバリヤが不連続膜となるような変化が起こっているという予備的観察の結果を得ている。このことについては,さらに次年度において検討を進めて行く予定である。
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