研究概要 |
システムLSIを目指した集積回路の微細化は著しく,0.65mmルールによる回路の実現が見えてきた。このような状況にあって,Cu配線の微細化に伴い,低抵抗材料による有効な極薄バリヤの実現は,信号遅延を引き起こす配線抵抗の上昇を抑えるために必須の開発課題である。本研究は,この問題に対する基礎的検討として,フィールド酸化膜であるSiO_2上に形成されるCu配線モデル系について,(1)低抵抗バリヤ,(2)Cu[111]配向バリヤ,(3)極薄バリヤの観点から,バリヤ材料のあり方を代表的材料の提案と共に行った。同質異像の高抵抗相が存在するTaの相安定化のために固溶体であるTa-W合金を提案し,低抵抗バリヤで,Cu[111]配向の可能性を指摘した。この結果より,bcc金属バリヤの有効性を確認するため,Nbを用い,Cu[111]/Nb[110]/SiO_2/Si高配向配線系が実現可能なことを示した。極薄バリヤ材料としては,バリヤ厚さと同程度以下の結晶粒を持つナノクリスタル薄膜を候補として考え,VNナノクリスタル膜をバリヤとして適用しそのバリヤ特性を調べた。VN膜は抵抗率〜50μΩcmと低抵抗であり,〜10nm厚さのVNバリヤを適用したCu/VN/SiO_2/Si系において,600℃1hの熱処理においてもCuの拡散を十分に抑制しており,優れた極薄バリヤとなるととが実験的に確認された。さらに,〜5nmバリヤの適用を検討しており,有望な結果が得られており,ナノクリスタルバリヤの有用性が示唆されている。
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