研究概要 |
1000Gbit/inch^2を越える超高密度磁気記録素子には記録ビットの熱揺らぎを抑えた,全く新しい概念に基づいた記録方式が必要である。強磁性ドヅトを配列したパターンメディアは孤立した記録ビットを形成するもので,次世代の記録媒体として期待されている。金属薄膜中にナノスケール電子注入を行う手法は,強磁性ドット配列を形成できるため,パターンメディア型の超高密度磁気記録素子を実現する手法として期待されている。本研究ではナノスケール電子注入技術を用いてナノスケールドット配列及び磁壁ピンニングサイトの形成をアモルファスや結晶質薄膜を用いて実験した。またこのようにして作製した強磁性ドット配列の磁区構造を調べた。 1 ナノスケール電子注入技術による強磁性ドットの作製 ナノスケール電子注入は走査プローブ顕微鏡を用いて行った。ドットの形成条件はアモルファスFeZr薄膜、結晶質FePt, CoPtを試料として検討した。ドットは大気中でのタウンゼント放電,試料のジュール加熱及び再結晶化によって形成される。磁性ドットの最小ドット径は50mm、細線の最小幅は10nmであった。 2 磁場中磁気力顕微鏡(MFM)観察装置による磁区観察 印加磁場中での磁気力顕微鏡観察を行う装置を設計,製作した。印加磁場は最大6kOeであり,磁場は薄膜面内ある。また磁気力顕微鏡の空間分解能として10nm以下が達成された。磁区構造は試料及びドットの作製条件に依存するが,FePt薄膜ではドット配列による磁壁ピンニングサイトが,アモルファスFeZrでは単磁区構造が観察された。 3 面内磁気記録媒体における微細磁区構造 面内磁気記録中の磁気微細構造をMFMで観察し,LLGシミュレーションを用いて考察した。面内記録媒体の媒体ノイズの原因は,磁化の渦構造と星型の磁化発散によって生ずる。このような磁気微細構造は・磁気遷移領域の磁気揺らぎによって発生するものと考えられる。
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