ポリシランはSi-Si結合が連なった高分子であり、そのσ結合が共役して特異な光物性を有していることから、電子材料として注目されている。その共役効果は側鎖に付く置換基によって強く影響を受ける。置換基がすべてフェニル基からなるポリジフェニルシランはポリシラン化合物のなかではもっとも長波長側(400nm付近)に紫外吸収・発光を有することから興味深い化合物である。しかし、ポリジフェニルシランはいかなる溶媒にも不溶で、加熱すると融解することなく分解してしまうため、薄膜化などのデバイス化が困難であった。 そこで、溶媒に可溶なポリジフェニルシラン誘導体を得ることを目的として検討を行った結果、片方のフェニル基のp-あるいはm-位にC6以上のアルコキシ基を導入することによって、ポリジフェニルシラン誘導体は有機溶媒に可溶になることを見いだした。得られた可溶性m-(PmHPPS)およびP-ヘキサノキシ誘導体(PpHPPS)の紫外吸収スペクトルおよび発光スペクトルからポリジフェニルシランの物性を保存していることが分かった。 さらに、合成したをEL素子としてデバイス化を試みたところ、両者ともに77KでEL発光することを初めて見いだした。前者の場合には室温でもEL発光可能であった。また、ポリジヘキシルシランとPmHPPSを混合し発光素子を作製したところ、77Kにおいて両ポリシランからのEL発光が観測されることも見いだした。 一方、PmHPPSにクマリン6を添加して、ポリシラン/有機色素混合発光層EL素子を作製したところ、室温で有機色素からのEL発光を観測することに成功した。このことにより、ポリシランから有機色素へのエネルギー移動が起こっていることを実証した。
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