初年度は、Zr+Y金属ターゲットを用いた反応性スパッタ法によるSi基板上へのYSZ薄膜のエピタキシャル成長について、検討を行った。 従来、用いられてきたターゲット表面が酸化している状態の酸化物モードでの堆積では、チャンパー内のプラズマ中に、活性な酸素や未反応の酸素が多く存在するため、それが堆積したYSZ膜中を拡散して、YSZ薄膜とSiとの界面にSiOx層を厚く形成すると考えられる。そこで、これらの影響を少なくする方法として、ターゲットが酸化されない金属モードによる堆積を試みた。その結果、金属モードで堆積したYSZ薄膜の実効誘電率は、YSZのバルク値が27ぐらいに対して約20と、従来の酸化物モードによる試料の倍以上の値が得られた。また、堆積時のO_2とArとの流量比を変化させることで、膜の実効比誘電率を22にすることができた。このことは、界面のSiOx層形成をSiO2換算膜厚で0.2nm程度まで抑制したことを意味している。これは、金属モードによる堆積によりチェンバー中の残留酸素つまり、YSZ膜の形成には余分な酸素が減少したためと考えられる。さらに、YSZ膜中ヘのSiの拡散をO_2流量比8%以上で、ある程度抑制出来ることがわかった。最後に、YSZ薄膜の堆積後、その上に直径0.1〜0.5mmのAl電極形成し、窒素雰囲気中で300℃、30分のポストアニール処理を施したところ、膜の実効誘電率を減少することなく、C-V特性のヒステリシスが解消され、曲線の歪みもなくなることがわかった。また、400℃、30分のポストアニール処理では、SiOx層が厚くなることもわかった。
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