研究概要 |
Bi_4Ti_3O_<12>(BIT)薄膜は、アルゴンと酸素ガスを用いた反応性スパッタリング法により、エピタキシャルIrあるいはPt薄膜上にヘテロエピタキシャル成長した。そのIrやPt薄膜は、アルゴンガスを用いたスパッタリング法によりエピタキシャル(100)YSZ/(100)Si基板上に堆積した。X線回折パターンは、エピタキシャル(001)BIT薄膜が(100)IrやPt薄膜上に45°面内方向に回転してヘテロエピタキシャル成長していることを示した。しかし、ラザフォーフォド後方散乱(RBS)法からは、Ir/YSZ/Si構造上のBIT薄膜には多くの空洞が存在すること及びBIT, Ir, YSZ及びSiが相互に拡散していることが観測された。これは、BIT薄膜作製時の酸素とIr薄膜とが反応して酸化Irとなるこや、それに誘発されて他の元素と酸素との反応が一因であると、X線回折測定やRBS測定かちわかった。一方、Pt薄膜上に堆積したBIT薄膜は、ほどんど拡散のない、通常の密度を持つ膜、即ちほとんど空洞が無い膜であることがわかった。Pt薄膜上のBIT薄膜の分極一電圧ヒステレシス特性は、ループが小さいながらも観測されたが、Ir薄膜上のものは、ほとんど観測することができなかった。このことから、Ir薄膜上のBIT薄膜の空洞及び構成元素の相互拡散が、BIT薄膜の強誘電性の発現を阻害する要因であると推測された。なお、Ptでも(111)Pt薄膜上のBIT薄膜は、強誘電体であるペロブスカイト相ではなく準安定なパイロクロア相となっており、強誘電性を示すBIT薄膜を成長させるには、Pt薄膜を(001)BITが成長させやすい(100)方向に成長させる必要があることがわかった。
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