研究課題/領域番号 |
12650306
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
深海 龍夫 信州大学, 工学部, 教授 (90021005)
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研究分担者 |
番場 教子 信州大学, 工学部, 助手 (90303445)
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キーワード | 圧電セラミック / タンタル酸リチウム / 非鉛圧電体 / 固溶体セラミック / CMOS発振器 / ラム波 / 化学量論比 / 非化学量論組成 |
研究概要 |
前年度までにLiTaO3を母体としてCaTiO3を15%固溶させたちのが焼結性に優れ、密度が高く、キュリー点を450℃程度に低下させ、電界冷却法による分極処理を施すことによってこの系の材料でも明瞭な圧電活性が現れることを示した。本年度はさらにより強く安定した圧電材料を得るために化学量論比および微量の第三成分添加を試み、さらにそれらの材料が圧電材料として実際に応用可能であることを確認した。 まず、これまでに知られているLiO2-Ta2O5系相図により化学量論組成よりTa2O5側にLiTaO3の固溶領域が存在することから、Ta2O5過剰側に化学的にも電気的にも安定な組成があるのではないか、と考えて化学量論比の影響を調べた。その結果、LiTaO3のTa位置が5%程度過剰でも異相を生じることはなく、そのほぼ中央の2%過剰の組成では極めて再現性よく安定した圧電性を観測することができた。さらに、機械的品質係数Qmを改善する目的でCa(Fe1/2Ta1/2)O3を微量置換することを試みた。0.8%添加したセラミックでは共振周波数と反共振周波数との間の周波数で誘導性となり、位相は80°までの回り込みが観測され、インピーダンスで3桁におよぶ変化が見られた。 このように圧電性に優れた組成を開発することに成功したので次にこれらの材料が実際に圧電セラミックとしてどの程度実用化可能かを評価した。まず、圧電セラミックとして最も多く利用されている発振子としての可能性を調べた。トランジスタを用いたピアス回路でまず発振を確認し、さらにCMOS IC(CD4069UBE)を用いても実験を行い、発振動作を確認した。直径10mmのセラミックを用いた場合、径方向振動による231.5kHzでのほとんどひずみのない正弦波波形が観察された。次に、ラム波の励振、検出を試みた。直径16mm、厚さ0.3mmの15%CaTiO3を固溶したセラミックに櫛状電極を設け実験した。電極指間隔0.4mm、アパーチャー角度90度で入出力電極ともに4対の電極指を有する。30MHz付近に挿入損失最小となる周波数があり、挿入損失は30dBほどであった。この値はPZTセラミック等と比べてもおよそ同程度である。これは30dBを超える利得を持ったアンプのフィードバックループに挿入することで発振機を構成できることを意味しており、実際きれいな正弦波のラム波発振機を得ることができた。 このようにLiTaO3径の強誘電体においてもペロブスカイト型強誘電体と同じように固溶体を構成することによって幅広く物性の制御が可能で、とりわけCaTiO3との固溶体系では分極処理をして圧電セラミックを得ることができ、さらにはCMOSおよびラム波による発振を確認することができ、少なくともこの種の応用に関してはPZT系セラミックを用いずとも対応できることを示した意義はきわめて大きいと考えられる。
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