欠陥状態がアモルファス半導体の光学的、電気的性質をほぼ決めてしまうので、欠陥状態を知ることがこの分野では非常に重要である。本研究は、光学、電気的雑音の組み合わせ測定、解析から欠陥のエネルギー状態や密度を評価する新しい"欠陥スペクトロスコピー"を確立しようとするものである。アモルファス半導体の代表であるa-Si:Hとカルコゲナイドガラス(a-Chと書く)を用いて、 1)バンドギャップ光照射下における光伝導度のゆらぎの測定と解析。 2)光ルミネッセンスのゆらぎの測定と解析。 に重点を置くことにした。 光伝導度は光キャリアの"輻射と非輻射"再結合の二つの過程に支配されるので、雑音(電気的)には周波数スペクトルを通してこれらの情報が含まれる。ただし、輻射と非輻射は分離できない。一方、光ルミネッセンスでは輻射再結合の情報のみが含まれる。これらの二つの測定、解析そしてデータの統合によって、従来、分離が困難であった発光、非発光の過程が明確になる。 本年度は目的1)にしたがいa-Si:Hとa-Chの光伝導度のゆらぎ(雑音)測定から開始した。a-Chでは、光による構造変化を伴うため、現象はより複雑化した。そこで、光構造変化の起きるダイナミックスを研究の一部として重視し、とりあげることにした。その結果はすばやくPhys.Rev.B(Rapid Communication)に掲載された。 現在次年度に光伝導度とそのゆらぎ測定が進行中である。アモルファス半導体が本質的にもつ不均質構造とゆらぎの問題がはっきりしつつあり、これは本年夏、フランスで開催される国際会議(第19回アモルファスと微結晶半導体国際会議)でこれらの一部が招待講演として取り上げられることが決まっている。
|