本研究では、光学、電気的雑音の組み合わせ測定、解析からアモルファス半導体の欠陥のエネルギー状態や密度を評価する新しい"欠陥スペクトロスコピー"を確立しようとした。光伝導度のゆらぎをもたらすものとして材料のマクロな不均質性が決定的な影響を及ぼすことがわかったため、アモルファスシリコン(a-Si : H)とカルコゲナイドガラス(a-Ch)のバンドギャップ光照射下における光伝導度のゆらぎの測定と解析に焦点をあてた。結果を要約する。 1.a-Si : Hでは構造の不均質性やポテンシャルゆらぎが"雑音"の大きな原因となるため"欠陥"の影響がマスクされてしまう。そのため当初目的とした欠陥スペクトロスコピーからやや主題が外れることになった。しかし、構造の不均質性のスケールが本研究から明確になるという新しい結果が得られ、ニース(フランス)で開催された国際会議(第19回アモルファスと微結晶半導体国際会議、2001年8月)の招待講演として取り上げられた。 2.a-Chでは、光による構造変化を伴うため、現象はより複雑化する。光構造変化の起きるダイナミックスを研究の一部として重視し、その結果をPhys.Rev.B(Rapid Communication)で発表した。a-Si : Hと同様にニースの国際会議の招待講演に組み込まれた。 3.a-Chでは上記の光誘起現象とともに欠陥の性質が直接光伝導度に反映し、光交流伝導(一種の雑音とみなされる)を通した欠陥のエネルギー準位や密度(スペクトロスコピー)が得られることがわかった(ニース国際会議の一般講演で報告)。 4.光伝導度の周波数分解によって、キャリアの再結合時間の分布を知ることができるようになり(応答の成分を実部、虚部に分解)、光ルミネッセンスの寿命分布との比較から"無輻射"成分をとりだせるようになってきた。これらを全て踏まえた実験、考察を引き続き行っていきたい。
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