斜めスパッタ法で形成されるナノスケール磁性構造体の形成条件、磁気特性の解明を試みた。マグネトロンスパッタ法を用いた斜めスパッタリングにより形成されるFeNi薄膜は、高さ・間隔とも概ね10nm程度の構造を自己組織化的に形成するが、その再現性向上と構造誘起の一軸磁気異方性との関係を探求した。その結果、Fe、Ni、Co、FeNi合金等、磁性薄膜の種類により誘導される異方性が大きく変化することを見出した。XRDによる結晶構造解析から、各々の薄膜試料の配向状態が試料によって大きく異なり、結晶磁気異方性と形状効果による磁気異方性との関係でナノスケール構造体の磁気異方性が決定されることを見出した。現在より定量的な検討を進めている。 斜めスパッタFeNi薄膜を下地層とするCo-Sm-Oグラニュラー薄膜のトンネル磁気抵抗効果(TMR)を調べたところ、グラニュラー膜の下地層に上述のナノスケール磁性体を用いることで、約200倍に達するTMR磁場感度向上に成功した。 現在、これらの知見を踏まえ、RFイオンビームスパッタリングによるナノスケール磁性体の形成、並びに非磁性体との組み合わせによる高感度TMR試料の作製を試みている。
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