研究概要 |
スピントランジスタをはじめとする電子スピンの自由度を最大限に生かした電子デバイス(スピントロニクス・デバイス)を創製するための基本技術である半導体へのスピン偏極キャリア注入の高効率化をはかるために、スピン注入源として有望な完全スピン偏極(ハーフメタル)強磁性体ならびにそれを利用した半導体/磁性体量子超構造を電子状態の第一原理計算に基づいて物質設計及び物性評価し、以下の成果を得た。 1.GaAs等の化合物半導体と整合性のよいハーフメタル強磁性体を第一原理計算に基づいて探索し、平成12年度に発見した閃亜鉛鉱型CrAsに引き続いて、閃亜鉛鉱型CrSb及び(格子を平衡状態から若干膨張させた)CrPが、ハーフメタリックな電子状態をもつことを新たに見出した。 2.閃亜鉛鉱型CrAs, CrSbにおいて、平成12年度の第一原理計算では考慮していなかったスピン軌道相互作用が伝導電子のスピン偏極率に及ぼす効果を第一原理的に評価し、スピン偏極率が数パーセント程度しか低下しないことを確認した。この成果は、これら新規ハーフメタル強磁性体がスピン偏極キャリアの注入源として有望であることを示唆する。 3.閃亜鉛鉱型CrAsと化合物半導体GaAsを数分子層ずつ交互に積層した量子多層構造の電子状態を第一原理計算し、各々を2分子層ずつ積層した多層構造が強磁性状態においてハーフメタリックな電子状態を保持することを見出した。この成果は、厚膜作成が困難な閃亜鉛鉱型CrAs, CrSbの替わりに上記の多層構造をスピン偏極キャリア注入源として利用可能であることを示唆する。
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