研究概要 |
スパッタ法でFe-SiO_2グラニュラー膜およびFe-SiO_2/SiO_2積層膜を作製し,その磁気特性,抵抗率およびスピン依存トンネル効果の膜厚依存性とSiO_2層厚依存性を詳細に調べた.結果を以下に要約する. I)単層膜(43.7vol.%Fe)の場合,抵抗率は膜厚に殆ど依存せず約20Ωcmであったが,磁化Mは膜厚が1500nmから60nmに減少したとき,920emu/cm^3から250emu/cm^3まで減少する.また,この変化に対応して磁気抵抗比(MR比)も3.2%から1.6%まで減少する. II)多層膜:SiO_2(x)/[Fe-SiO_2(10nm,43.7vol.%)/SiO_2(x)]_<10>の場合,磁化Mはxの増加とともに減少する;x=0から3nmに増加したとき,Mは270emu/cm^3から140emu/cm^3まで減少する. i)面内に電流を流したとき(CIP),このxの変化に対し,抵抗率は16Ωcmから1x10^3Ωcmまで増加する.しかし,トンネル活性化エネルギーCとMR比はxに殆ど依存せず,C=0.16eVと1.4%であった.これらの値は2次元分散型グラニュラー膜の特性を示すものである. ii)膜面に垂直に電流を流したとき(CPP),抵抗率はxとバイアス電圧に大きく依存する.特に,バイアス依存性はトンネル効果を如実に示すものである.また,xが0.5nmから2nmまで増加したとき,抵抗率は10^6倍に増加し,xの増加によりトンネル障壁が増加することを示している. III)磁化Mが膜厚およびSiO_2層厚とともに変化する原因を調べるために,磁化曲線をランジュバン関数を用いて解析した.このよなMの変化はFe粒子の磁気モーメントが膜厚や層厚によって変化するためであるという知見を得た. IV)上記多層膜のCPP特性の測定において,電極にはCrAu非磁性合金膜を用いた.続いて,スピンバルブ効果を調べる目的で,軟磁性NiFe合金および半較磁性Co膜を用いたときのMR特性を調べた.この場合,低磁場でスピンバルブ効果に対応するMR曲線が得られた.しかし,そのMR比は小さく今後の課題である.
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