研究概要 |
1.Fe-SiO_2グラニュラー膜の構造解析 昨年度は,Fe-SiO_2グラニュラー膜をスパッタ法で作製し,その磁気特性とトンネル磁気抵抗効果の膜厚依存性を詳細に調べ,膜厚の減少とともに磁化が減少することを見い出した.本年度はその原因を明らかにするために,CEMSおよびESCAを用いて構造解析を行った.膜厚の減少とともにFeの酸化または珪酸化が起きていることを明らかにした.この酸化または珪酸化は基板温度が低いときに起きることが推測された. 2.Co-SiO_2グラニュラー膜の2次元分散型トンネル磁気抵抗効果 i)MR比の膜厚依存性:MR比は膜厚が20nmのとき最も大きく,膜厚の減少とともに小さくなる,しかし,SiO_2バッファ層の上に堆積させると,膜厚3nmすなわちFe粒径と同程度で2次元分散型構造においても20nmの膜厚の場合と同程度のMR比が得られる.10nm以上の3次元分散型の場合,MR比は温度の低下とともに増加するが,2次元分散型の場合は減少することを明らかにした. ii)CPP型TMR特性:2次元分散型Co-SiO_2膜をSiO_2層を挟んで4層または19層積層した膜の面に垂直に電流を流したときのトンネル磁気抵抗効果(CPP-TMR)を調べた.3次元型膜のCPP-TMRの場合と同様に,温度の低下とともにMR比は増加する.また,バイアス電圧の減少とともに,MR比は増加することを明らかにした. 3.Co-Bi交互蒸着膜の磁気伝導特性 CoとBiを交互に蒸着して幅広い組成のCoBi膜を作製し,その磁気特性および伝導特性を組成および温度の関数として調べた.Biの多い領域では正常磁気抵抗効果と正常ホール効果が重畳されている.Coの量が増えると,異方的磁気抵抗効果と異常ホール効果が支配的になる.特に,17Vol%Coのとき,異常ホール効果の符号が150Kを境に変化する.すなわち,低温では負になり,高温では正になる.また,その温度係数は非常に大きく,室温でのホール定数は純Coの値の10倍以上の大きな値を示す.
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