平成12年度は、主にSmFe_7多結晶の作成を試みるとともに、単結晶の作成した。SmFe_7が安定に存在することは単結晶の研究により明らかにしたが、この物質の多結晶が合成されたという報告は未だない。これはSm-Fe系の相図が複雑であることに起因していると思われる。そこで、SmFe_7が存在する組成、温度領域を明確にするために、多結晶の合成を試みた。しかしながら、多結晶の合成は、溶融状態から冷却したときに数種の相が複雑に混在し、単結晶の合成以上に困難であることが明らかとなった。SmFe_7相の存在できる領域が極めて狭いためであると思われる。この研究は次年度も継続して行う必要がある。 単結晶を用いた研究は、次年度以降に予定しているが、単結晶の作成には通常2週間程度の時間を要し、短時日に多数の結晶を得ることは難しい。このため、次年度以降の研究に備え、SmFe_7単結晶の作成を試み、現在も継続中である。SmFe_7の窒化はその磁気異方性の制御のために行う予定であるが、他の化合物で観られるように、窒素は格子間に侵入し、いわゆる侵入形化合物となることが予想される。このような侵入形化合物では、結晶内部の窒素量の制御は簡単ではない。そこで、異方性制御の他の手段として、Feの他の元素による置換も採用し、SmFe_7単結晶中のFeのAlによる置換を試み、初期的な結果であるが、Alによる置換が、異方性を変化させ得ることを明らかにし、公表した。 また、SmFe_7単結晶の作成の過程で、Sm_6Fe_<23>で表される未知の相が安定に存在することを発見し、その単結晶を用いて、結晶学的・磁気的性質を明らかにし、公表した。この物質はSm-Fe系の物質の中でも単位胞に含まれるFe原子の最も多い。応用の観点からも興味深く、さらなる研究を行う必要があると思われる。
|