我々が発見した新金属間化合物SmFe_7は、NdFeB系磁性材料に匹敵する大きな飽和磁化と磁気異方性を有する硬質磁性材料である。しかしながら、この物質は単結晶として得られるが、多結晶体は未だ得られていない。本研究は、多結晶体の存在する組成及び温度領域の確定と窒化及び元素置換による磁石特性の高性能化、さらにSm-Fe系における新物質の探索を目的とした。多結晶が得られないのはSmFe_7が極めて狭い組成及び温度領域に存在することに起因すると考え、種々の組成でアーク溶解したインゴットを900℃〜1200℃の温度範囲で10℃毎に熱処理後急冷した試料に対するX線回折及び回折データの解析から、SmFe_7相の出現領域を推定した。その結果、SmFe_7相が1030℃〜950℃の狭い温度範囲に存在する可能性が高いことを明らかにした。しかしながら、SmFe_7相の単相化は極めて困難であり、成功には至らなかった。 SmFe_7の単結晶に対する窒化は更に困難であった。希土類金属元素の中でSmは極めて酸化し易い元素であり、SmFe_7相の結晶を不活性ガス気流中で熱処理を施すと、極めて僅かな残留酸素により、窒化に至る前に、400℃以下の低温でαFeとSmの水酸化物に分解する。窒化を成功させるためには超高真空を達成可能な熱処理装置と不活性ガスの純化装置が必要とされた。現時点ではこれら装置を整備することができなかったため、方針を変更し、非磁性元素Alの置換がSmFe_7の磁石特性に及ぼす効果を、Sm-Fe系の全ての相のAl置換単結晶を作成し、SmFe_7相結晶に対する効果と比較検討し、置換の効果が結晶構造とFe原子の最隣接配位Fe原子数に依存することを明らかにした。また、上記の研究過程で今まで存在が確認されていなかったSm-Fe系の新物質Sm_6Fe_<23>相の結晶の育成に成功し、この磁性も併せて明らかにした。
|