低誘電率層間膜は多層配線層の(抵抗)X(容量)籍の低減、超LSIの高速化をはかる上で、特に重要である。しかし未だに耐熱性、安定性に優れた層間膜は開発されていない現状である。本研究では新たな低誘電率層間膜カーボンリッチフロロカーボン膜の堆積を行ってきた。この膜の堆積には微細パターンへの埋め込性の優れた化学気相反応を用いている。 現在まで、この膜の堆積をカーボン組成を広い範囲で変化し行った。この組成の減少につれ、誘電率は低下するが、逆に耐熱性は低下、二つは相反関係にあることを初めて定量的に明らかにした。この結果、両者の最適化をはかったカーボン組成0.5のフロロカーボン膜で、誘電率2.7、耐熱温度470℃の優れた膜をCVD法により実現できた。この研究成果からこの膜は最も実用化に近い優れた膜であると考えた。しかし本年度の研究の成果からこの低誘電率層間膜には下記の欠点が存在することがわかった。 1)この熱的に安定な膜は最も安定なバリア膜と考えられている銅拡散バリアTaN膜との間で界面反応が生じることが判明した。フロロカーボン膜からFがTaN膜に、TaN膜のTaがフロロカーボン膜に深く拡散することを明らかにした。この問題の解決には今後新たな銅拡散バリアの開発が必要である。 2)この界面反応に関連し、熱処理によりこの低誘電率層間膜の密着力は急激に低減する。このため機械的研磨による銅低誘電率多層膜の平坦化プロセスで、膜はげが容易に生じる。この問題の解決に低圧、低速度研磨を行うと実用性が欠けることとなる。 今年度はこの問題解決のため下記の研究を行う。 1)低圧高速度研磨を実現するための新たな研磨スラリーの開発、2)低カーボン組成低誘電率層間膜に代わる新たなCVD低誘電率層間膜の研究。
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