研究概要 |
著者らは1995年より酸化物であるM形フェライトにメカニカルアロイング法を適用し,メカニカルコンパウンディング(以下M.C.)法と称し簡単な方法で高保磁力を有するM形フェライト微粒子が得られることを報告している。また先に,M.C.法により作製したM形フェライト(Sr系,Ba系)にLa_2O_3及びCo_3O_4を複合添加することにより磁気特性が向上することを報告した。本年度は,先に良好な磁気特性が得られたM.C.法により作製しSr-La-Co系およびBa-La-Co系フェライト粉末を用い,途中添加物としてCaOおよびSiO_2を添加し,異方性焼結磁石について詳細に実験検討した。 その結果Sr-La-Co系粉末を用いた焼結磁石については,SrO・nFe_2O_3組成において,n=6.3としLa_2O_3添加量が2.0wt%,Co_3O_4添加量が0.3wt%の粉末を用いた。さらに,一般的なフェライト磁石に有用な添加物として知られるCaOおよびSiO_2を途中添加して異方性磁石を作製した。CaOは焼結助剤としての効果により,焼結反応が進むために密度が増加し,それに伴い残留磁化が増加すると思われ,逆に粒成長が進むため保磁力が低下する。また,(BH)_<max>はピークをとる温度がCaO添加量が増加すると低温側にずれる傾向がみられ,SiO_2添加量を0.5wt%一定としたときにはCaO添加量が1.3wt%のときに(BH)_<max>が最大となっており,本研究で作製した焼結磁石の中で最も良好な(BH)_<max>の値は,33.7kJ/m^3(4.24MGOe)であった.また,0.7wt%CaO添加試料が最大の(BH)_<max>をとる焼成温度1230℃付近の試料において,J_r=0.4T(4.0kG)以上,H_<cJ>=317kA/m(4.0kOe)以上と,現用のSrフェライトと同等の値が得られた。次にSrに比べより安価であるBaを用いて,Ba-La-Co系フェライトにおいても同様に実験検討を行った。用いた粉末はn=6.2とし,La_2O_3添加量は2.0wt%,Co_3O_4添加量は0.3wt%のものである。(BH)_<max>=30.2kJ/m^3(3.79MGOe)が得られたが,Sr-La-Co系より劣る結果となった。
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