研究概要 |
昨年度はメカイカルコンパウデイング法により作製したSr-La-Co系,Ba-La-Co系フェライト微粒子を用いた異方性焼結磁石の作製について種々検討した。焼結磁石の作製において,焼結処理に伴う保磁力の低下は問題点であり,改善が容易ではない点でもある。高密度を優先させると粒子成長が起こり保磁力が低下し,また,粒子の成長を抑制しようとすると密度が低下した。これらを解決するためには,SiO_2,CaO添加が必要であった。 近年,高密度焼結体の作製方法として,焼結の処理を行う際に圧力を与えた状態で焼結を行ういわゆる加圧焼結が有効であることが各分野で報告されており,加圧焼結のひとつとして放電プラズマ焼結(SPS)法が短時間,低温で焼結可能な方法として注目されている。放電プラズマ焼結法とはアーク放電に移行する直前の過度アーク放電現象,即ち雷現象と同様な,瞬間・断続的に火花放電エネルギーを利用し加圧下で焼結を行う方法である。つまりOn-Off直流パルス通電法を用いた加圧焼結の一種と言える。今年度はSr-La-Co系M型フェライト微粒子を用いて,特に異方性処理的なことは行わず,放電プラズマ焼結(SPS)法により焼結磁石を作製し,作製条件等が磁気特性に与える影響について実験検討を行った。さらに,SPS法と同様な加圧焼結の一種であるホットプレス法についても,同様の粉末を用いて作製し検討を行った。 放電プラズマ焼結法及びホットプレス法により等方性焼結磁石を作製したところ,等方性磁石としては高密度で高保磁力を有するバルク磁石の作製に成功した。また,異方性処理を施していないにもかかわらず,異方性が付与されることがわかった。これらの原因を調べるために一般的な機械的粉砕粉を用いて,SPS法及びホットプレス法にて等方性に焼結磁石を作製したところ,ほとんど異方性が付与されなかった。この結果,SPS法及びホットプレス法により作製した焼結磁石に異方性が付与される理由は,メカニカルコンパウンディング法により作製された微粒子は,扁平板状で粒度がそろっているために,加熱時の加圧が機械的な配向に強く作用するものと考えられる。代表的な焼結磁石の諸特性及び作製条件を以下に示す。 SPS法…焼成条件:1100℃×5分加圧力:50MPa,磁気特性(BH)_<max>:18.3kJ/m^3(2.3MGOe),H_<cJ>:324kA/m焼結密度:5.15Mg/m^3 ホットプレス法…焼成条件:1150℃×10min,加圧力:50Mpa,磁気特性(BH)_<max>:19.9kJ/m^3(2.5MGOe),H_<cJ>:308kA/m,焼結密度:5.05Mg/m^3
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