(1)Bi_6Ti_2Nb_8O_<30>(BTN)セラミックスの誘電率-温度特性に見られる異常にブロードなピークの原因追求のため、(111)Pt/Ti/SiO_2/Si基板上に成長したMOD膜の誘電率の温度依存性を測定した。(111)Pt上のBTNは完全な配向性を持たないが、相転移温度が単結晶の値(245℃)より高温側に約13℃ずれるものの、ブロードなピークを示さず、セラミックス試料の誘電特性が大きな内部応力の影響を強く受けているらしいことを裏付けることができた。 (2)(100)SrTiO_3および(100)MgO基板上に成長したMOD膜はc軸配向していること、面内配向はBTN膜のa軸が基板結晶のa軸に対して±18.5°傾いていることをX線回折測定より明らかにした。この±18.5°の傾きは、正方晶タングステンブロンズ構造の単位胞中の酸素八面体の配列の特異性を反映していることを指摘した。 (3)セラミックス試料の分極-温度特性のヒスレリシス測定を行い、残留分極の温度依存性を初めて観測し、160〜175℃という、単結晶の相転移温度(245℃)やセラミックスの誘電率のピーク温度(180〜200℃)に比べて低い温度で消滅することを見いだした.また、自発分極の値が1μC/cm^2と非常に低いことと合わせて考慮すると、分極反転している分域の割合が極めて小さい可能性がある。 (4)セラミックス試料(厚さ100〜150μm)について偏光顕微鏡による強誘電性分域の観察を試み、厚さ方向に複屈折性を示す領域が極く少ないことが分かった。このことは自発分極の大きさが非常に小さいことと対応しているように思われる。
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