研究概要 |
今年度はリラクサ強誘電体単結晶Pb[(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)_<0.91>Ti_<0.09>]O_3(PZNT91/09)で(1)巨大電気機械結合係数k_<31>が得られる起源(特許出願中)とこの単結晶で(2)高圧電性(巨大k_<33>,k_<31>,d_<33>,d_<33>)が得られる起源を明らかにした。更に、(3)チタン酸鉛系(PT/PLT)およびビスマス層状化合物SrBi_4Ti_4O_<15>(SBT)セラミックスでのバイポーラパルス応答に関する基礎特性を明らかにした。 (1)巨大k_<31>の起源;矩形板単結晶(13^Lx4^wx0.36^Tmm)を用い、誘電・圧電特性のDC分極電界(E)依存を調べた(40℃中10分間、Eを変えて分極処理)。その結果、比誘電率がEに対して3ステップ状になった。これは厚み方向と面内(13^Lx4^wmm)でドメイン反転を起こすしきい電界が異なることを意味していた。E=1000〜1500V/mmで巨大k_<31>が得られ、この時面内がモノドメインになっていることが、透過型偏向実体顕微鏡で確認できた。E>1500V/mmでは、発生した歪によりモノドメインが二つのドメインに分かれ、k_<31>も60%まで低下した。巨大k_<31>の起源は、最適な分極電界範囲を選び、板面内をモノドメイン化する必要があることが明らかとなった(ドメイン制御単結晶)。 (2)PZNT91/09単結晶での高圧電性の起源;種々の結晶面(100),(110),(111)をもつ単結晶の分極特性を調べたところ、(100)面結晶を40℃中で分極した時のみ、巨大k_<31>が得られた。これは(100)菱面体結晶のみで実現できることを意味し、その弾性定数値からこの結晶相は極めて機械的に軟らかく、電界により容易に変形することがその起源と考えられた。 (3)PT/PLTおよびSBT圧電セラミックスの三角波バイポーラパルス特性;PT/SBTセラミックスはキュリー温度が400℃以上と高く、更に、材料自体が機械的に硬いと云う物理的性質をもつ。これらセラミックスを最高200℃中で最大印加電界10kV/mm、また、印加時間(100,200,400ms)を変えてP-Eヒステリシス曲線および誘電・圧電特性を調べた。その結果、測定温度が高く、印加時間が長い程圧電性は向上したが、DC分極で得られた値には及ばなかった。
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