強誘電体ドメインの分極電界に対する挙動、特に、誘電・圧電特性とドメイン反転・回転の関係を明らかにした。この方法は、「セラミック組成が同じでも異なったドメイン構造をもつドメイン構造制御セラミックス」の開発に繋がるものと考えられる。これまでのPZT系セラミックスで得られた(組成)vs.(分極電界)vs.(誘電・圧電特性)の関係より求めた(組成)vs.(ドメイン構造)vs.(誘電・圧電特性)の結果を鉛系圧電セラミックスや強電体結晶へ展開し、次のような結果を得た。 (1)チタン酸バリウム(BT)およびビスマス層状化合物SrBi_4Ti_4O_<15>(SBT)セラミックスのドメイン構造:BTおよびSBTセラミックスの分極電界依存では、前者は180°反転/90°回転の全てが観測された。一方、後者はチタン酸鉛(PT)系セラミックスと同様に180°反転のみであった。PZTセラミックス/Pb[(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)_<0.91>Ti_<0.09>]O_3 (PZNT)単結晶も含め、強誘電体ドメイン構造と分極界との関係が明らかになった。 (2)ドメイン制御による新規物生:PZNT単結晶のドメイン構造を電界で制御することにより、巨大横効果圧電性(電気機械結合係数k_<31>>80%)を初めて見出し、また、その原因を究明した。 (3)新たな圧電デバイス:巨大k_<31>をもつPZNT圧電単結晶を利用し、圧電ユニモルフ/バイモルフを試作した。バイモルフの屈曲振動の結合係数k_bは、従来のPZT系セラミックスに比べ、k_b=31%→70%と2倍以上の優れた特性を示した。さらに、PZNT単結晶は電界の増加と共に菱面体晶→正方晶→単斜晶とより低い結晶対称性へ変化し、最終的に巨大k_<31>が得られることを結晶中の周波数定数(音速に相当)の測定から明らかにした(平成16年度第51回応用物理学関係連合講演会費で発表予定)。
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