本研究の目的は、金属ナノクラスターが示す共鳴吸収特性、光学的非線形性、複屈折性をはじめとするバルク状の金属には見られない特異な性質を積極的に応用して、光技術の分野で有用な新しい光デバイスや光集積回路技術を開発することにある。金属ナノクラスターの光学特性は、金属材料の種類のみならず、ナノクラスターの形状(アスペクト比)にも大きく依存するので、金属ナノクラスター分散媒質において、一部の局所的な領域のナノクラスターの形状を変化させることにより、光学特性の全く異なる領域を媒質中に形成することが可能となる。本研究では、このような原理に基づき、特に引き延ばし法による超薄型偏光フィルムとそのパターン化技術、波長多重三次元追記型光ディスクメモリについて基礎研究をすすめ、また、関連して、金属に限らず誘電体等の微細構造に基づく新しい光デバイスの提案も行った。 先ず、超薄型偏光フィルムについては、この超薄型偏光フィルムの光学的異方性が600℃以上の加熱により緩和される現象を利用し、炭酸ガスレーザ光を用いたレザライティングにより数十ミクロンから数ミリの範囲で、円形や矩形パターンニングを行い、スポットサイズ切替器等の実現の基礎研究を行った。波長多重三次元追記型光ディスクメモリについては、2段階蒸着法により製作される複合島状金属薄膜を記録媒質として用い、銀-金島状薄膜(波長800ナノメートル用)とアルミ-銀島状薄膜(波長500ナノメートル用)の多層膜を用いて2波長での追記型光記録の原理確認実験に成功すると共に、それらの媒質の記録のメカニズムについても明らかにした。最後に、誘電体交互多層膜、ポーラス構造薄膜、柱状構造薄膜といった人工異方性媒質を直接コアに装荷した新しい導波路型偏光子について理論解析を行い、製造上のトレランス等について検討を進めた。
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