本研究ではSi基板上に光回路のアクティブコンポーネントとなるErドープ導波路を形成し、その希土類イオンとキャリアの相互作用や光増幅度等、光導波特性に関する諸特性を評価することを目的とする。 Si基板を陽極化成することにより得られる多孔質シリコン(ポーラスシリコン:PS)にErを溶液より化学的にドープする際、その前後の酸化処理で発光特性が劇的に改善されることを見出した。これにより従来から問題であった温度消光が激減し室温でも十分な発光が観測された。これは希土類イオン中の4f電子とSi中のキャリアの相互作用が極薄酸化膜形成により変化した結果と推測される。現在この現象の詳細解明を進めている。 PSはフォトニック結晶とは異なり光学的非晶質であるため、その光学的特性の制御は制限される。本研究ではPSからSiフォトニック結晶への展開を図るため本年度からオランダFOM原子分子物理研究所と共同研究を開始した。我々が提案したErドープ法をもとにSiフォトニック結晶に応用して1.54μm発光を観測し、その可能性を示した。この結果はアメリカMRS会議で報告された。 さらに導波路型受光器への応用を目的としたSi上のGeドット作製に着手した。Si基板上では1.54μmの受光器の形成が極めて困難であり光回路開発上クリアしなければならない問題点である。本研究の試みはサイズ効果の小さいGeドットを形成することによりGeドットの光吸収端の高エネルギーシフトを抑制し、かつ歪みを緩和し受光部を形成しようとするものである。結晶成長においてGe系の有機金属気層成長(MOVPE)を実現し、有機金属系で初めてGeドットの形成に成功した。またそのサイズは、サイズ効果が期待できる10から20nm付近のものとサイズ効果の小さい50nm付近の2種類のものに集中し供給量を変えることでその割合を制御できることが分かった。
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