本研究は、Si系半導体光導波路を用いて、テラビット伝送に向けての1.54μm帯光波長多重通信で必要となる光電子デバイス(合波、分波、アクティブフィルター、光増幅、光交換)の開発を目的とした。現在まで我々は希土類ドープSi系半導体として有望である材料として多孔質シリコン(PS)の有効性を提案してきた。本研究では、このPSを利用したSi基板上へのErドープ光導波路デバイス作製プロセスを開発した。多孔質シリコン作製法である陽極化成の性質に着目し、マスクを用いたイオン注入法によりSi基板面内のpn制御を行うことで、Erドープ領域となる多孔質シリコンの面内制御を行った。ドープしたErイオンの活性化プロセスでは、ドープ後の高速酸化・アニールの連続処理で発光特性が劇的に改善されることを見出した。これにより従来から問題であった温度消光が激減し室温でも十分な発光が観測された。2001年より開始したオランダFOM原子分子物理研究所A.Polman教授との共同研究においては、ErドープSi導波路にSiフォトニック結晶を導入すべく準備を開始した。我々が提案したErドープ法をもとにSiフォトニック結晶に応用して電子正孔対の再結合エネルギーによる励起で室温において1.54μm発光を観測し、その可能性を示した。さらに、この新しいErドープ法を発展させて新しい半導体材料ErSiO自然超格子混晶を発見し、その基本特性を明らかにした。この半導体はErを構成元素としかつ温度消光がほとんどなく室温においても優れた発光特性を示した。また1.54μm帯の集積化受光デバイスに適した材料であるGeドットおよびSiGe薄膜のSi基板上への作製を行った。結晶成長法においてGe系の有機金属気層長(MOVPE)を提案、実現し、有機金属系で初めてGeドットの形成に成功した。ドットサイズの制御性について詳細に調べ、サイズ効果が期待できる10から20nm付近のものとサイズ効果の小さい50nm付近の2種類のものに集中し供給量や温度を変えることでサイズ制御できることが分かった。またMOVPE法によるSiGe/Si超格子構造作製に成功し、その高い制御性を示した。
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