研究概要 |
平成12年度は,シリコンを基板とした光集積回路圧力センサを試作し,その特性評価を行った。センサは感圧部のダイヤフラムとその上に形成される直線光導波路とで構成される。本研究では,大きさ1.2mm×10mm×20μmのダイヤフラムを,シリコンの異方性エッチングを利用して作成した。また,光導波路を作成するため,まず,シリコンを熱酸化して1.0μmの二酸化シリコン層を形成した。次に,チャンネル導波路とするため,チャンネルとなる部分の二酸化シリコン上に幅12μm,深さ0.1μm溝を刻みつけた。その後,二酸化シリコン層の上に,導波層となるポリスチレン層を厚さ1.0μmで塗布した。ところで,センサ感度はダイヤフラム上の導波路位置に強く依存することが理論計算から分かっているが,これまで実験的には明らかにされていなかった。そこで,50μmおきに導波路を作りつけ,センサ感度の導波路位置依存性についても実験的に考察することとした。測定の結果,センサの位相感度はダイヤフラムの縁で最も高く,ダイヤフラムの縁から内側へ0.2mm離れた導波路で無感度となり,ダイヤフラムの中央で感度が再び高くなるという依存性が得られた。ポリスチレンの光弾性係数が分からないため,定性的な比較にはなるが,これは理論的予測とほぼ一致した結果であった。ダイヤフラムの縁に位置する,最も感度の高い導波路について,圧力検出可能範囲は32kPa(240mmHg)で,位相感度は98mrad/kPaであった。一般の血圧計の最高目盛は300mmHgであり,今回試作したセンサは血圧測定に必要な圧力検出範囲や感度を十分に満たしているものと考えられる。
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