研究概要 |
本研究では微細埋め込み金属を有する共鳴トンネルトランジスタ(RTT),共鳴トンネルダイオード(RTD)を試作し、微分負性特性、共鳴準位幅、バンド不連続量、自励発振特性などのデバイス特性の評価と、ケルビンフォース顕微鏡(KFM)による断面ポテンシャル評価とを組み合わせて、ナノメータ級極微小デバイス作製のプロセス条件・再成長条件を実験的に明らかにすることを目的とした。 平成12年度 GaInP/GaAs縦型RTTを試作し、4.2Kにおける電流電圧特性のゲート動作の確認、電流-電圧特性における電子波の横方向閉じ込め効果を示唆するピークの観測された。実測結果と微細ヘテロ構造における3次元輸送モデルによる理論解析結果と比較検討することにより、本デバイスでは量子ドットが形成されていること、ゲート電圧によってドットのサイズが制御されていることが明らかになった。 ヘテロ界面の急峻性劣化は見かけ上のバンド不連続量の変化として観測可能である。ここでは3重障壁RTDを用いたバンド不連続量評価法の提案を行った。本方法を試作した3重障壁共鳴トンネルダイオードに適用し、その有効性を明らかにした。試作したRTDはGaAsに対して歪障壁層となるGaAsPを用い、伝導体バンド不連続量はおよそ180meVと評価され、Γ-X遷移による不連続量が精度よく評価されたことを示唆している。 平成13年度 共鳴トンネルダイオードの共鳴準位幅広がりに影響を及ぼす要因を分離評価する手法を提案した。具体的には試作したデバイスの温度10K以下における電流-電圧特性の2階微分特性を構造不均一による広がり関数(ガウス型)`と散乱による広がり関数(ローレンツ型)とのコンボリューションとみなし、実測データの解析からそれぞれの関数の線幅を評価する。実際のGaAsP/GaAs RTDを用いた解析では、界面凹凸等の構造不均一による影響が散乱によるものより数倍大きいことが明らかになった。
|