従来の単一周期ドメイン反転LiNbO3結晶を用いた擬似位相整合光パラメトリック発振によって波長7μm以上の遠赤外光を発生させることは、結晶中での吸収が大きいため困難である。本研究では、遠赤外光〜THz波の発生を目的として、2周期ドメイン反転モノリシック結晶を新たに考案した。このシグナル2波長発振を光源として、有機非線形結晶DAST中の差周波光混合による波長可変THz波発生に初めて成功した。 励起光路上に二つの周期を含んだ直列型PPLNを用いると、2つの異なるエネルギー保存則と位相整合条件が成り立つため、2組のシグナル波、アイドラ波が発生可能となる。今回の実験に用いた励起光源はNd : YAGレーザー(波長:1.064μm、パルス幅:120ns、繰り返し周波数:1kHz)である。周期が29.5μm、29.3μmの直列型PPLN(温度150℃)から発生した2つのシグナル波(1.546μm、1.529μm)をDAST結晶中で差周波光混合した結果、波長139μmのTHz波が発生した。また、PPLNの温度を100℃から200℃まで変化させることで、THz波長は120μmから160μmまで変化した。なお、THz波の最大出力は52fJ/Pulseであり、今後PPLN共振器の出力ミラー反射率の最適化、およびDAST結晶長の増大により高出力化が可能である。また、励起光源であるNd : YAGレーザーの繰り返し周波数を高くすることにより平均出力の増大が可能である。今回は、THz波測定用Siボロメータの応答速度上限である5kHzまでの動作を確認した。
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