研究概要 |
本研究課題に関して得られた成果は,動画像の動き情報の性質に関するものと画像フレーム内の画素情報に関するものとに大別される.動きに関しては,従来の考え方に反して,動き表現の精度を犠牲にした方が最終的な符号量の節約に繋がるという新しい結果を得た.波形情報の符号化理論においては,符号化によって波形に発生する歪と所要符号量との関係を伝送率-歪特性という.ここでの結果は,伝送率-歪特性で評価する場合,動きの処理と,その後段の処理とを独立させて行う従来の手法が非効率的であることを示している. 画素情報の扱いに関しては,新たな観点からベクトル量子化法を開発した.ベクトル量子化は,予め用意しておいた多数の代表パターンを符号表という形で整理しておき,その中から,入力波形を最良近似するものを選択し,符号表内のパターン識別番号によってその近似表現を記録・伝送するものである.本研究においては,符号表の構成の際に,与えられた画像を解析することによって得られた,その画像特有のパターンも代表パターンとして登録するという手法を新たに提案した.符号表の内容は符号化器と復号化器とが共有する必要があるので,符号化対象画像特有のパターンは,復号器に与えられるべきであり,符号量を費やす.従来はこれを恐れて画像特有のパターンを符号表に載せることは検討されなかった.本研究においては,画像特有のパターンも所詮は画像表現に有用であり,採用の是非は,前述の伝送率-歪特性を通じて決定されるべきであることに留意し,必要に応じて符号表に加えることが有用であるという結論を得た.
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