研究概要 |
本研究課題に関して得られた成果のうちで,動きに関して二つの成果が得られた.既に動き表現精度を犠牲にすることにより,符号量の低減が図られるとの見通しのもとで,本年度は画質,符号量双方を1本の評価式に組み込み,ラグランジュ未定係数法の原理を参考とした適応ビット配分法を研究し,従来の動画像符号化効率を上回る結果を得た.現在の所,総当たり的な最適化を行っているので,計算量が大きいことが重大な問題点として残っている. 上記の結果は,動き情報の表現精度をわずかに犠牲にすると,統計的には,動き表現に与える符号量を大幅に削減できるという実験的事実に基づいている.一方,動き表現のための符号量増加が無視できる程度であれば,動き表現に新しい考えを導入する余地は否定されてはいない.そこで,過去フレームの中から,現在のフレームを精度良く予測できるものを検出して利用することを検討した.動画像といえども,次々に完全に新しい場面が現れるとは限らず,言わば"再利用"可能なフレームが含まれていることが無視できない確率で発生する.過去に溯る際の探索時間,メモリー量に関して難点はあるものの,有効性が高いとの結論を得た.これが二つ目の成果である.なお,過去のフレームに溯る際の符号量の増加は,現実には無視できる程度ある. 基礎理論面では,画像符号化において避けることのできない処理要素としての,量子化問題を検討した.現実の量子化器出力エントロピー関数の歪に対する傾斜が,特異な振る舞いをすることを明らかにした.これは理論的興味を越えて,実際の符号化特性の改善に寄与するものである.
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