研究概要 |
キャビティ付スロットアンテナをマイクロ波エネルギー伝送に適用することを提案し,アンテナ素子設計手法としての時間領域差分(FDTD)法,アンテナ素子の給電構造および薄形化に関する数々の提案を行ってきた.本研究は,これまで提案を行ったキャビティ付スロットアンテナおよび設計法を適用して,側面をワイヤで構成したキャビティ付スロットアンテナの開発研究を行うことを目的としている.キャビティ付スロットアンテナとは直方体のキャビティ(空洞共振器)の一つの面にスロットと呼ばれる開口部を設け,アンテナとして利用する.SPS2000送電アンテナは約250万素子から構成される巨大なフェーズドアレーアンテナである.したがって,製造および構成は単純でなければならない.しかしながら,キャビティ側面と上下地板の電気的接続およびキャビティの製作は容易ではない.このようなことから,キャビティ側面をワイヤにより構成することで,電気的な特性を劣化させることなく,製造を容易にできるのではないかと考えた. 本年度得られた研究成果は次のとおりである.ワイヤを複数本使用して側面を構成したアンテナ素子について,ワイヤ間隔Δと入力特性の関係を明らかにした.すなわち,許容されるワイヤ間隔について計算機シミュレーションを行い,ワイヤによって側壁を近似できることを明らかにした.実験モデルを製作し,設計結果の妥当性を実験的に確認した.アンテナアレーとした場合,アンテナ素子間の相互結合によりアンテナ素子で実現された入力特性は変化する.特に,側面をワイヤで構成した場合,側面を介した電磁界の結合が無視できない.このようなことから,素子について検討したワイヤ間隔に対して,アレーアンテナの特性変化を検討した.その結果,素子間相互結合の上限値を解析および計算機シミュレーションにより明らかにした.これらの結果はアンテナ設計資料として有効である.
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