研究概要 |
キャビティ付スロットアンテナをマイクロ波エネルギー伝送に適用することを提案し,アンテナ素子設計手法として時間領域差分(FDTD)法,アンテナ素子の給電構造および薄形化に関する提案を行ってきた.本研究においては,マイクロ波エネルギー伝送に適したアレーアンテナ素子として側面をワイヤで構成したキャビティ付スロットアンテナの開発研究を行う.キャビティ付スロットアンテナとは直方体のキャビティ(空洞共振器)の一つの面にスロットと呼ばれる開口部を設け,アンテナとして利用する.しかしながら,キャビティ側面と上下地板の電気的接続およびキャビティの製作は容易ではない.このようなことから,キャビティ側面をワイヤにより構成することで,電気的な特性を劣化させることなく,製造を容易にできるのではないかと考えた. 本年度得られた研究成果は次のとおりである。逆F素子給電ポスト側壁キャビティ付スロットアンテナの設計法を提案した.すなわち,スロット幅,スロット長,逆F素子のワイヤ長およびポスト寸法の調整によりインピーダンス整合を実現する設計法を提案した.設計の結果ポスト本数の最小値は8であることを示した.アレーアンテナの素子間相互結合量の実験による評価と解析結果との比較検討を行った.その結果,アレーアンテナにおける素子入力特性は-16dB程度であった.しかしながら,これは実用上利用可能な値であると考えられる.さらに,素子間相互結合量の評価結果から,給電素子と隣接する素子間の相互結合量がそれ以外の素子との結合量に比較して10dB以上大きいことから,給電素子とそれに隣接する素子との相互結合量についてのみ注目するだけでよい.さらに,それら相互結合量は5×5素子以上のアレーアンテナにおいて0.8dB以下の範囲で一致していることを明らかにした.したがって,大規模アレーアンテナにおける励振素子と隣接する素子との相互結合量は5×5素子以上の規模を有するアレーアンテナで推定可能であると結論した.この結果に基づき,5×5素子アレーアンテナを製作し,数値解析結果の有効性と実験結果の妥当性を明らかにした.同時に,アレーアンテナの試作を通じて,大量生産に適したアンテナ製造法を提案し,その有効性を確認した.
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