本研究では、整数論の難しい問題に安全性の根拠を置く公開鍵暗号とディジタル署名の開発と、それらの強度評価を行った。 1.初めに、RSA暗号の落し戸と同じ原理をもつディジタル署名方式の開発を行った。RSA暗号の落し戸は、秘密の値である法Lのもとで互いに乗法逆元の関係にある暗号鍵eと復号鍵dを定める点にあるが、本署名法の落し戸もこれと同じであり、秘密の法Lのもとでの文書Mの乗法逆元Kを定め、公開する法nのもとでの最大生成元gをK乗して署名文Sを定めるものである。つまり、本署名は素因数分解の難しさと離散対数問題の難しさに安全性の根拠を置いている。 2.次に、素数を法とするElGamal署名を合成数を法とする場合に拡張した署名方式の開発を行った。本署名法では、署名文の検証が合成数n=pqを法とする場合と、素数p及び素数qを法とする場合の複数の方法で可能になるため、ディジタル署名の用途が広がる。また、安全性の根拠は合成数を法とする離散対数問題の難しさに置いている。 3.次に、素因数分解の難しさに安全性の根拠を置く暗号やディジタル署名の強度評価を行う目的で、n=p^2qのタイプの合成数の素因数分解アルゴリズムの開発を行い、本アルゴリズムの計算量について考察した。本方法は、ルジャンドル記号を2乗した値は1になることを用いた、平方数p^2に着目したヤコビ記号を用いる素因数分解アルゴリズムであり、計算量はおおよそO(n^<1/3.7>)となる。
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