研究概要 |
本研究は,マーカ等を使用者に取り付けることなく,ロバスト性とリアルタイム性を両立することの可能な掌の追跡と手形状の認識の手法を検討することにより,使用者にとってより自然で親しみやすいヒューマンインタフェース,特にポインティングデバイスの実現を図ることを目的とする.具体的には,生物の視覚系の「注視」に相当する機構を持った,画像の局所的な領域の低次のモーメントを用いる手法について検討する.従来,掌の追跡と手形状認識によるポインティングデバイスは,画像処理で容易に抽出可能なマーカを掌や指に付けることにより,少ない計算量で安定な処理を実現しているが,マーカを身体に付加することは,使用者に不自然な使用感を与えてしまう.本来,画像処理による計測の重要な利点は,このような不自然さを感じさせることのない非侵襲性にある.非侵襲性を保つためにマーカ等を用いずにポインティングデバイスを実現する方法は存在するが,リアルタイムで安定な動作を得ることは困難である.本研究はこれらの問題点を,生物の視覚系の基本的枠組みに立ち戻って解決することを試み,画像の局所的モーメントを用いて掌の追跡と認識を行うための数理モデルの構築を中心に研究を行った.注視範囲を掌の移動に伴って逐次的に変化させる手続きを明らかにして,掌の大きさと位置は時々刻々変化することから,掌の大きさと位置の推定システムを構築し,推定値をもとに視野を決定する手法を提案して,その有用性を明らかにした.
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