研究概要 |
本年度はLANネットワーク上において,可変ビットレートのMPEG形式で圧縮された動画像(MPEG圧縮動画像)を多重化して伝送するために,伝送レートを平滑化することがシステム全体に与える影響を理論と実験の両面から考察した. 伝送レートの平滑化に関しては,既に最大値と標本分散の両方を最小にするという意味で最適な算法(以下ではOS法と呼ぶ)が知られている.本研究では,OS法によって得られた出力(平滑化された伝送レート)の時系列解析を行い,平滑化された伝送レートが長期依存性と自己相似性の特徴を持つことを明らかにした. 長期依存性と自己相似性を有する定常な時系列データは,フラクショナルブラウン運動(fB_m)としてモデル化できることはよく知られており,その中には,平滑化する前のMPEG圧縮動画像も含まれる.本研究では,新たに,平滑化された伝送レートも長期依存性と自己相似性の特徴を持つことを明らかにした.このことは,平滑化された後の伝送レートもfB_mとしてモデル化できることを意味する. そこで,fB_mの解析法の一つであるNorrosらの手法に基づき,動画像多重伝送システムにおけるサーババッファの溢れ確率を算出し,溢れ確率をあるしきい値以下にするような最大伝送可能動画数をシミュレーションによって求めた.その結果,フレームレートで伝送を行うよりも平滑化を行った方が伝送可能動画数,ネットワーク利用率が大きくなることが分かった.また,多重化におけるjitterの影響はほとんどなく,多重化される時系列データの分散が大きな影響を与えるという結果を得た. さらに実際のLAN上での伝送実験により,OS法を用いただけでは動画再生時に画面の乱れが生じることが確認され,その原因がデータ遅延(jitter)であることをつきとめた.そこで,jitterを考慮したアルゴリズムを作成し,同じバッファサイズの下で再生画像が問題なく再生されることを確認した.
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