1 ウェーヴレット変換領域2次元適応フィルタの実現 ウェーヴレット変換領域における適応フィルタの構成について検討を行った。入力信号のウェーヴレット変換は、購入した信号処理ソフトウェアが有するツールを用いて行い、その後の適応処理部分をシミュレーション・プログラムにより実現した。結果として、 (1)ウェーブレット変換の時間-周波数変換である利点を生かすには適応フィルタを2次元構成により実現する必要 (2)データに依存しないフィルタ構成とするため、時間軸上でのデータ数の正規化が必要 (3)係数更新アルゴリズムとしては一般的なLMS型のアルゴリズムで実現可能 (4)収束性を向上させるため、所望信号に対してもウェーヴレット変換が必要 ということが見いだされた。 2 電子サインの特徴の解析実験 電子サインにおける固有的特徴であるペンのX、Y座標、筆圧、傾きが、セキュリティを確保するための個人的特徴を有しているかを購入した信号処理ソフトウェアを用いて解析した。更に、各特徴量に対してウェーヴレット変換による時間-周波数解析を行い、最適なウェーヴレット関数(マザー・ウェーヴレット)や必要な解析レベルについての検討を行った。いくつかの本人署名とその詐称署名の比較から、 (1)筆圧データ、傾きデータに関しては個人特徴が顕著である。 (2)座標データでは本人と詐称者との違いを見いだすことは困難である。 ということが見いだされた。また、マザー・ウェーヴレットとしてはDaubechiesのものが最適であり、高い周波数レベルにおいて本人とその詐称者との違いが大きくなることが見いだされた。 これらの結果から、次年度以降では取得が容易な反面、詐称されやすい座標データに着目し、ウェーヴレット変換領域適応フィルタを用いて処理することにより、本人とその詐称者の区別がより明確にできることを検証していく予定である。
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