研究概要 |
本年度は,マルチキャストとアドホックネットワークに関する環境適応型エージェント技術とその評価について研究を進めた. 同時に発生するマルチキャスト通信を実現するためには,複数のマルチキャストツリーを予約する必要がある.しかも,その予約は,マルチキャストメンバの加入・脱退という変化に適応できることが求められる.本研究では,マルチキャストメンバの変化に適応できる複数のマルチキャストツリーの予約法を提案した.この提案法は,各ノードに配置されたエージェント間のメッセージ交換を並行して行うものである.シミュレーション実験により,提案法の処理時間は,マルチキャストメンバの変化の回数に比例して増加せず効率的であること,および,変化の間隔分布の分散が大きい場合に有効であることを示した. アドホックネットワークではノードが移動するため階層構造を維持することが容易ではない.本研究では,エリアの規模の調整,ノードの機能の変更を局所情報に基づいて自律的に行うことにより,階層構造を維持する適応的階層構造構成法を提案した.この提案法では,ノードの移動に適応して,エリアおよびノードの機能を自律的に変化させている.提案法のパラメータを決めるにあたり,移動するノードの数,移動方向,移動速度等を変化させて,ノードの移動に対する提案法の適応性を評価して,提案法の有効な適用範囲を明らかにした.特にノードが高速度で移動する場合において,提案法が有効であることを示した.更に,適応的階層構造成法を用いた階層ルーティングを提案した.この提案法は,エリア内はルーティング表に基づくルーティング,エリア間は非循環ルートに基づくルーティングを組み合わせた階層ルーティング手法である.提案した階層ルーティング手法と従来の階層構造を用いないルーティングとの間で比較を行い,パケットの到達率およびオーバヘッドに関して提案法の有効性を示した.
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