研究概要 |
(1)新しい最尤復号アルゴリズムの提案を行い,その計算量について評価した.以前に提案した再帰的最尤復号(RMLD)では,再帰的に分割した区間について各区間符号を適当な部分符号でコセット分割し,各コセットにおける局所的最尤ベクトルを計算する.しかし,AWGN通信路では,局所的最尤ベクトルを全て計算せずに,必要に応じて適応的に計算することで,RMLDの計算量を大きく削減することが可能となる.摸擬によって,従来のビタビ法やRMLD法に比べて非常に効率的であることが示された.長さ64の3次RM符号では,SN比が3.0dBの場合,計算量は,ビタビ法の約0.2パーセント,RMLD法の約2.5パーセント程度となる.また,これまでは困難とされてきた長さ128のいくつかのRM符号などの最尤復号誤り特性評価にも成功した. (2)Chase復号法のように,限界距離復号法を繰返してよい復号語を探して行く復号法では探索中心をいかに適切に選ぶかが重要な課題である.誤り制御特性を改善する為に,まず探索中心を求める際に,以前のステージで探索された領域を考慮するような動的な選択方法(D法))を評価した.摸擬によると,いくつかのBCH符号について,D法による探索中心を用いた繰返し型復号法は,同じ繰返し回数のChase II復号法よりかなり小さい誤り率を達成することができた.しかしこの方法では,各受信系列に対してそれぞれ探索中心を求める計算量が大きくなる.探索中心を求める計算量を軽減する為にD法によって生成された探索中心のサンプル系列の集合から各繰返しステップ毎に固定した誤りパターンを導出する方法を提案した.この方法(FS法)では予め誤りパターンを生成するので各受信系列に対してそれぞれ探索中心を求める必要はなく実現は容易である.更に摸擬の結果,同じ繰返し回数を持つD法とFS法は,ほぼ同じ誤り率を与えることが示された.
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