本研究では、移動カメラにより対象を撮影した連続画像列から、対象の3次元情報を推定することにより画像列の連結、つまりモザイキングを行い、さらに同一表面をオーバラップして撮影した複数のフレームの画像を合成することによって、入力の画像解像度を向上させた「超解像度画像」を合成することが目的である。このオーバラップ領域内で、画像の特徴点毎に対応づけを行うことにより、カメラの移動量と特徴点の3次元位置を推定し、因子分解法を適用することによって書籍表面の3次元形状モデルを復元することができた。この際、連続する10フレーム程度の画像列から復元される3次元形状モデルは、書籍全体のうち一部の形状に過ぎないが、カメラの移動に伴い順に復元されてくる部分形状の3次元モデルを連結することによって、全体形状の復元が可能になった。さらに、この3次元モデル表面に対して、入力された画像をマッピングする手法を検討した。共通の3次元モデル表面にマッピングすることによって、撮影された画像列を連結するモザイキングが実現できた。さらに、このテクスチャマッピングの際に、同一領域を撮影した10枚程度の複数の画像列から、その領域に対応する入力画像よりも4倍から16倍程度高い解像度で合成することができた。 また、射影幾何学に基づくFundamental MatrixとHomography(平面射影行列)を用いて、未校正多視点画像列から超解像度画像を生成する手法を新たに提案し、その手法に関する基礎的な検討を行った。提案した手法は、画像列に対し特徴点追跡を行うことで得られるFundamental Matrixを用いて対応点を算出する。このとき、対応付けの誤差を最小にするための最適化を行い、原画像の解像度に依存しないサブピクセル単位の精度で対応関係の推定を行う。この最適化の際に用いる評価値は合成画像に含まれる高周波成分値とする。本手法の有効性を検証するために、シミュレーションにより合成した画像列や実際にフリーハンドのカメラで撮影した画像列から超解像画像を合成する実験を行った。この結果、誤差の最小化が適切に行われ、良好な超解像画像を合成することができた。
|