研究概要 |
本年度はまず、二次Volterra系の理論解析を行った。 (i)白色入力の場合,線形系の誤差曲面と異なり、Volterraの誤差曲面も著しくゆがんでいることを解明している。具体的に、自己相関行列の構造解析により,誤差曲面のすべての主曲率と主軸を固有値と固有ベクトルから求めて,1方向上の主曲率だけが他の方向のN倍のオーダ(NはVolterraシステムの線形項の数とする)である,つまり,ある方向上においてのみ著しく急峻で,他の方向では比較的に平坦である,という特徴を示している. (ii)さらに,この結論を有色信号入力の場合へと拡張している.一般的に,有色信号の特有の性質を使わずに,その高次自己相関行列の固有値と固有ベクトルを求めるのはできないため,固有値の厳密な値の代り,そのできるだけタイトな上下界を求めて,同様に最大固有値,即ち誤差曲面の最大曲率が,他のもののN倍のオーダである,つまり,ある1方向に著しく急峻で,他の方向では相対的に平坦である特性を示している. そして、上記解析結果に基づき、高速適応アルゴリズムを開発している。 (i)白色入力の場合:誤差曲面の主曲率の逆数をその主軸方向のステップサイズとして採用して,最急降下法と同程度の計算量で,ニュートンラフソン法と同程度の収束速度を有する適応アルゴリズムを提案している. (ii)有力入力の場合:最大固有値の上下界から,その推定値を求めて,さらにグラムシュミット直交化によって,誤差曲面の最急峻方向の固有ベクトルを推定する.それによって,主曲率に反比例するステップサイズを用いることで,最急峻方向上のオーバーシュートを抑えながら,高速且安定に収束する適応アルゴリズムを開発している. さらに、2次系においては,白色化操作を行うことで,有色信号に対するRLS型の演算を高速化する適応アルゴリズムの開発に取り込んでいる。従来、RLS法は0(N^5)の計算を必要とするが,新規アルゴリズムは,LMS法と同程度の0(N^2)の計算量で,RLS法の同様な収束速度を有する.
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