研究概要 |
本研究では,非線形適応システムのうち,Volterra級数展開をシステムモデルとして用いたVolterra型非線形適応システムの理論解析を行い,特に適応収束の不安定な要因と成る,誤差曲面の自明でない幾何学的な特徴を明らかにした。この理論解析に基づいて,安定で高速な適応アルゴリズムの開発と実現している。 まず、正規分布の入力の場合,誤差曲面の主曲率と主軸を固有値と固有ベクトルより、1方向上の主曲率だけが著しく大きく,他のもののN倍のオーダ(NはVolterraシステムの線形項の数とする)である,つまり,ある方向上においてのみ著しく急峻で,他の方向では比較的に平坦である,という興味深い特徴を明らかにしている,この事実は、Volterra系の誤差曲面も著しくゆがんでいる、また、その適応推定問題は、常に悪条件或いは不良設定問題であることを意味する. この理論解析の結果に基づいて、高速適応アルゴリズムを開発している。まず、白色入力の場合では、誤差曲面の幾何学形状に適した高速適応アルゴリズムの考案をする。具体的に,誤差曲面の主曲率の逆数をその主軸方向のステップサイズとして採用して,最急降下法と同程度の計算量で,ニュートンラフソン法と同程度の収束速度を有する適応アルゴリズムを提案する.次に有色入力の場合では、白色化操作を行うことで,白色信号に対する高速適応アルゴリズムを利用して,有色信号に対しても,RLS型の演算を高速化する適応アルゴリズムを開発する. 特に,2次系の場合では、RLS法はO(N^5)の計算を必要とするが,新規アルゴリズムは,LMS法と同程度のO(N^2)の計算量で,RLS法の同様な収束速度を有する.
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