本研究課題の目的は、薬物代謝機酵素を用いた選択性の高い匂い成分計測用のバイオデバイスを構築し、匂いを具現化しうるシステムの研究を行い、「匂い情報通信システム」を構築することである。本年度は特に、【実施項目1-匂い成分を高感度にデバイスの構築と特性評価】を進め、さらに、【実施項目2-センサのマルチアレイ化による人工嗅覚デバイスの構築】に関する光デバイスの基礎研究を実施した。以下に、その詳細を記す。 1.各種匂いセンサを作製し、その特性を評価した。 (1)まず、アルデヒド脱水素酵素を用いてアルデヒド用バイオセンサを作製し、本センサを気液隔膜型センサユニットに組み込み、アルデヒドガス用匂いセンサを構築した。本センサをガスセンサ評価システムに適用し、センサ特性を調べた結果、悪酔い成分であるアセトアルデヒドガスを15-300ppmの範囲で、選択的かつ連続的に計測することが可能であった。 (2)また、N-酸化触媒反応を導くフラビン含有モノオキシゲナーゼを用いバイオセンサを作製し、気液隔膜型センサユニットに組み込み、アミンガス用匂いセンサを構築した。本センサは、魚の腐敗臭であるトリメチルアミンガスを1-60ppmの範囲で計測することが可能であった。 2.一方、アレイ化用デバイスとして、光ファイバー型バイオセンサの作製と評価を実施した。作製では、ルテニウム錯体をコーティングした酸素感応型光ファイバー(外径:1.5mm)に、グルコース酸化酵素を固定化し、光ファイバー型グルコースセンサを構築した。本センサはグルコースを0.5〜100mmol/lの範囲で定量可能であった。 上記のように、(1)複数の匂いセンサを構築するとともに、(2)アレイ化が可能な光ファイバーセンサの予備実験に成功し、「匂い情報通信システムの構築」の目標達成に向け、初年度として十分な成果をあげることができた。
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