本研究は平成12年度〜14年度の研究期間おいて、【A-各種匂いセンサと人工嗅覚の開発】、【B-複合臭発生装置の開発】、【C-匂い情報の伝達および感応評価】を実施し、酵素を用いた選択性の高い匂い成分計測用のガスセンサを開発し、匂い情報を具現化しうるシステムを研究し、「匂い情報通信システム」の構築を行った。以下に、その詳細を記す。 (A)生体触媒である酵素を認識素子とし、各種匂い成分を選択的に計測することができるセンサ(バイオ・スニファ)を酸素電極や印刷電極にて開発した。計測可能なガス成分は、エタノール(アルコール臭)、硫化ジメチル(海苔臭)、トリメチルアミン(魚臭)、メチルメルカプタン(大根臭)、アンモニア、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどである。さらに、ルテニウム有機錯体を先端にコーティングした酸素感応型光ファイバーを使い、4種類の匂い成分を計測することができる「光ファイバーアレイ式人工嗅覚システム」を開発した。 (B)また、ガス発生装置(2ch式)を2台用いて、4種類の匂い成分を発生することができる「匂い発生装置」を開発した。本装置では、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化ジメチル、エタノールの4種の匂い成分を個別に発生し複合臭の再生が可能で、匂い伝達の官能評価に用いた。 (C)(A)「人工嗅覚システム」と(B)「匂い発生装置」を組み合わせ、匂い情報の伝達システムを構築し、食品臭の伝達を行い、その伝達度合いを官能評価にて調べた。匂い伝達では対象食品とし、魚(アジ)、大根、海苔、焼酎を用いて、(A)「人工嗅覚システム」にて食品臭に含まれる匂い成分濃度を計測し、その結果をもとに、(B)「匂い発生装置」にて食品臭を再生した。そして、再生した匂い情報について、官能評価(選択肢:8種)を行なったところ、80%以上の伝達率にて被験者に匂いの発生源(食品種)の伝達が可能であった。
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