研究概要 |
A,Bをn×n行列とする。このとき,IEEE754規格の倍精度浮動小数点数を実装するCPUにおいては(これは現代のほとんどすべての計算機に用いられているCPUがそうである), setround(down); C=A*B; setround(up); D=A*B; とすると,C【less than or equal】A*B【less than or equal】Dとなる。ただし,setround(up)は上への丸め,setround(down)は下への丸めとする。また,不等式は成分毎である。この事実をもちいると,多くの数値線形代数の問題について,数値解を求めるのとほぼ同じ計算時間(理論的な計算量のみならず,普段使っている(高速)数値計算パッケージを使った実際上の計算でも)で精度保証できることを示した: 1.Aをn×n行列,bをn次元ベクトルとするとき,Ax=bの数値解x^^〜の高速精度保証法。この結果を記述した論文はNumerische Matematikという雑誌に掲載決定した。 2.Aをn×n複素行列として,その全ての近似固有値の高速精度保証法。この結果をまとめた論文はLinear Algebra and its Applicationsに掲載決定した。 こうして,数値線形代数の分野の基本問題の精度保証が,数値解を求めるのと同程度の手間で計算できることを示すことができた。この結果により,数値計算結果の精度保証が日常的に行われるようになることが期待されるが,そのために更に各種の問題の高速精度保証アルゴリズムを開発するのが次年度以降の課題となる。
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