研究概要 |
本年度に得られた研究実績は次のようである. 1.連立一次方程式の数値解の高速精度保証法,固有値問題の数値解の高速精度保証法を開発した.連立一次方程式の数値解の高速精度保証法は,LU分解の事前誤差評価を有効かつ巧みに用いるもので,その計算量はLU分解の計算量と同一となる.すなわち,精度保証の研究分野で30年来の未解決問題であった,数値解を求めるのと同じ手間で精度保証ができるようにするという問題に対し,連立一次方程式という基本的な問題において,決定的な解法を与えた.また,固有値問題の数値解の精度保証も数値解を求めるよりも高速に精度保証ができることを明らかにした.これも画期的な成果である. 2.以上の理論的な成果を実用的な数値計算ツールとして結晶させることを目的に高速精度保証付き数値計算を行うためのインタプリタを開発した.本インタプリタは密連立一次方程式,対称,非対称固有値問題などを始めとする数値線形代数の様々な問題の解を,最適化BLASを組み込んだLAPACK(現在最も高速かつ信頼性の高い数値計算用ライブラリ)で解くためのユーザフレンドリなインターフェースを提供して,高速に数値計算できる.そして,得られた数値解の精度が何桁あるかを高速に精度保証する機能をもつプログラミング言語である.これにより,精度保証付き数値計算の理論を知らなくても,連立一次方程式や固有値問題を高速に精度保証付きで求めることができるようになった.この成果は精度保証付き数値計算の爆発的普及のために非常に有効であろう.
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