研究概要 |
本年度は、まず試作したプログラムを用いて、小型無線ロボットを動かし、センサの感度や無線による制御の応答性等を調べた。その結果、特に非接触型センサによる障害物の検出はかなり精度が甘く、プログラム上のなんらかの工夫が必要であること、ならびに無線による情報の送受信には時間ずれがかなり有り、複雑な制御の実時間処理には多くの制限の伴うこと等を明らかにした。さらに、ロボットが目的地に到るまでの経路を効率的に探索することを目的として、強化学習アルゴリズムに多重マッピングという概念を取り入れた手法を検討した。本手法により、領域の異なるマップを構成し、目的地までの経路の広域的な流れを見出す事を可能とした。また、制御のための信号処理においては、2つのマイクロホンで得た信号から音の到来方向を推定するアルゴリズムを検討し、室内環境で30度程度の角度範囲で推定可能であることがわかった。 つぎに、無線信号の強度変動特性のモデル化について検討を進めた。すなわち、屋内では直接波を主体に、周囲からの反射波が多数到来する多重波の合成となっており、(1)人の動きが直接波のごく近傍あるいは直接波そのものに影響を及ぼさない場合、変動の確率密度分布(PDF)はほぼ正規分布で与えられること、(2)一方、人体によって直接波が遮蔽される状態では、受信電界の合成レベルは定常値より30dB以上も劣化し、そのPDFはワイブルあるいはK分布に比較的良く合っていること、等を明らかにした。引き続いて、多重波環境下での遅延歪み特性に関するUHF帯(0.43,1.3,2.5GHz)伝搬実験を行い、その得られた結果から、室内では周囲の構成物の反射等の影響により多くの多重波が到来するため、伝送帯域特性が劣化し、多重波遅延が大幅に増えること、また、直接到来波を除いた多重遅延波のみの平均μ、標準偏差σ、実効伝送帯域幅Φの相関関係については、μ対Φの相関が周波数にあまり関係なく比較的強い逆相関を示すことを明らかにするとともに、各種遅延特性を定量的に求めた。
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