研究概要 |
昨年度は、ロボットの経路制御に正確な位置情報を用いない自律型の経路制御アルゴリズムの提案を行った。前年度の手法では、目的地に達するまでに未知の領域を優先して探索するため、一度目的地にたどり着いた後でも、無駄な行動が発生した。そこで、今年度はノードと呼ぶロボットの行動が変化する周囲環境情報を相互に結び付け、目的地までのノードリストを完成させる手法を提案し、シミュレーションで有効性を確認した。この手法では、ロボットの位置ではなく、どのような周囲環境で行動が変化したかを記号で表すことにより、記憶容量の削減と大域的な行動を選択可能となった。たとえば、従来の手法だと数cm位置がずれただけでも、位置情報として記憶させる必要があるが、提案している手法では環境が類似していれば記憶する必要は発生しない。次に、提案手法を実際の無線ロボットに実装する際に必要な通信方式として、アドホックネットワークでの通信データを階層化した新しい通信方式を提案した。提案方式では、抽象ノード層、中間層、実体層という3つのデータ階層に分け、相互の通信範囲を限定することで通信量を抑えることが可能である。本手法の有効性については今後ネットワークシミュレータによる解析を進める。 つぎに、屋内における無線信号の伝送特性について、前年度に引き続き、多重波伝搬遅延に関する測定およびそのデータ解析、ならびにシミュレーションによる検討を行った。すなわち、大学内の異なった室内伝搬環境下で得られたUHF帯(0.43,1.3,2.5GHz)と共に、より広帯域伝送の可能なSHF帯(5.2GHz)での実験を行い、直接到来波を除いた多重遅延波のみの平均、標準偏差、実効伝送帯域幅等を求め、それらの相関関係ならびに周波数特性等について、各種遅延特性を定量的に明らかにした。また、レイトレーシングを用いたシミュレーション結果と実測値との比較検討を行った結果、比較的簡易な室内モデルでも遅延のおおまかな傾向を模擬出来る可能性がある事が確認できた。今後、より一般的な知見を得るために更なる検討を進めて、室内伝搬モデルの構築に努めることとしたい。
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