近年衛星通信回線の利用拡大に伴い、マイクロは帯よりさらに周波数の高い準ミリ波帯やミリ波帯の電波まで実用化されるようになってきたが、まだ周波数20GHzのKa帯以上の電波の大気中の伝搬特性は十分把握されておらず、降雨減衰や交差偏波識別度(XPD)劣化特性に関してはさらにその特性を詳しく検討する必要がある。 本研究では、降雨減衰特性の時間率や累積分布確率による長期統計をまず解析した上で、実測データの時系列変動の相関時間等の特徴に注目し、降雨時に観測点上空あるいは近傍を通過した前線の種類や通過速度と比較することにより、雨域の空間スケールの推定を行った。そして、より現実的な降雨減衰の持続時間や降雨発生の時間間隔等の特徴的な値を導きだし、温暖、寒冷、閉塞、停滞前線、あるいは前線の北側、南側、台風の影響等について、各種前線に対するより具体的な位置関係について詳しく検討した。 その結果、継続時間分布に関しては、5〜10dB以上の大きな減衰量は従来言われてきたように対流性降雨の影響が主たる原因であり、むしろ前線構造と係わりの薄い夏季の対流雲や雷雨、いわゆる夕立やスコール等亜熱帯性の降雨の影響が大きいことが示された。これに対し今後準ミリ波帯のVSAT等の運用で特に問題となる3〜5dBの低減衰時においては、従来のKu帯以下の衛星通信回線ではあまり問題とされなかった温暖前線等による層状性降雨も大きな継続時間率を占めることが示された。また、雨域の空間スケールに関しては、概して前線の北側は15〜20kmであるのに対し、南側では10〜15km程度の特徴的な間隔で雨域が平均的に連続して通過する傾向があることが分かり、この傾向は温暖・寒冷前線のみならず、停滞前線にも概して当てはまることが示された。
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